平維盛は清盛の嫡男重盛の嫡男です。奥さんの北の方は、巴とか祇王のような濃いキャラとはちがって、ごく普通の武家の主婦で、10歳の跡取り息子六代御前と8歳の娘がいます。ホームドラマのような別れのシーンで、その等身大の描写がかえって胸に迫ります。
自分亡き後、この幼いこども達をどうやって無事に育ててゆけばよいのか、維盛は悩んでいました。平家が滅んだら源氏は草の根分けてもこの六代を探し息の根を止めようとするでしょう。現に、おとっつあんの清盛は死ぬ間際に、頼朝を生かしておいたのが間違いだったと猛烈に悔やんでいたし、頼朝も平家の末裔を一人でも残しておけば後々自分のようになると六代を徹底的に探すことになりますし。
で、彼は奥さんにこう言うのです。自分亡き後は、ともかく再婚せよと。
二人はラブラブだったようです。死んでも一緒にいようね、と誓い合っていたそうですから。北の方は戸惑うばかり。
あらすじです。
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1183年(寿永2年)7月
平維盛は、日頃から覚悟はしていたものの、いざその時がくると悲しかった。
維盛の妻、北の方は、故中御門新大納言・藤原成親の娘。成親は鹿ケ谷事件で処刑され、母も他界していた。桃のように美しい顔立ちで、絶世の人と言われていた。六代御前という10歳の若君と、8歳の姫君がいた。
「自分は、平家一門と共に西国へ落ちて行く。たとえ私が討ち取られたと聞いても、ゆめゆめ出家などしてはならない。どのような人とでも見もし見えて(=結婚して)、幼い子どもたちを育ててくれ」
しかし、北の方は維盛の袂にすがって「都には父も母もおりません。あなたに捨てられたら誰と結婚するというのですか。それなのに、どのような人とでも見えよ(=結婚せよ)など言われたことが恨めしい。前世からの契りがあったからこそ、あなたは情けをかけてくれましたが、ほかに誰が情けをかけてくれましょう。どこまでも一緒で、同じ野原の露とも消えよう、一つ底の水屑(みずく)にもなろうと小夜の寝覚めに睦言したことは皆、いつわりだったのですか。せめて、わが身一つならどうにかしましょう。捨てられた憂き目をかみ締めても留まりましょう。しかし幼い者たちを、誰に託しどうしろと言うのです。たとえ恨んだとしても、いっしょに連れて行ってください」
維盛が答えるには「あなたが13歳、われが15歳の時に見初め合い、たとえ火の中、水の底へも、共に入り、共に沈み、死ぬ時も先立ち、遅れることはしないと思い合った。しかし、憂き目に遭わせるのは、わが身ながら耐えがたい。どこかの港ででも落ち着いたら、そこから迎えを出す」。維盛はそう告げ、思い切って立ち上がった。鎧を身に着け、馬を引き寄せ、いざまたがろうとした時、若君と姫君が走り出て、維盛の鎧の袖の草摺(くさずり)に取りつき、泣きついた。
「父上はどこにおいでになるのですか。われも参ります。われも行きます」
維盛は、これが無常の世の絆と思い、いよいよ、どうすることもできない様子。
そこに、維盛の弟の平資盛、清経、有盛、忠房、師盛の兄弟5騎が中庭に入り、馬上から「行幸の行列ははるか先。どうして今まで遅参しているのですか」と声をかけると、維盛は馬に乗り出発した。しかし引き返し、縁側に馬を寄せ、弓で御簾をめくり上げ、「それ見よ。幼い者たちがあまりに慕うので、慰めようとしているうちに思いのほか遅参していたぞ」と泣きながら告げた。中庭に控える兄弟5騎も、鎧の袖を濡らした。
斎藤五と斎藤六という維盛に使える兄弟は、お供を願い出たが、維盛は2人に都にとどまり六代の世話をするよう頼まれ、涙を抑えて留まった。この兄弟の父は北国で木曾義仲と闘い討ち死にした齋藤別当実盛である。実盛が息子達を残して戦に赴く気持ちが今になって維盛には痛いほど分かる
北の方は、「ここまでつれない人とは思わなかった」と、うち伏して泣いた。若君、姫君、女房たちは、御簾の外まで転げ出て、声をばかりに泣き叫んだ。
都落ちの際、平家は、一門の館に火をかけ焼き払った。
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都落ちの時に平家は都中に火を放って焼き払っていってしまったのですね。都の人びとにとってみたらひどい話です。とはいえ、幼い子らが僕も行くと維盛に縋り付くのはもう涙が出ます。辛かっただろうなあ維盛。戦争は矛盾だらけです。
そして、もう一つ、さりげなく齋藤別当実盛親子と維盛親子の二組の別れが描かれているのも、一昨年「実盛」をやったわたしとしてはもうたまらなく切なく感じます。
皆さんはどんな風にお感じになるでしょうか。
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古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台!
語り:金子あい × 波紋音:永田砂知子
「平家物語」第4回公演
【日時】10月22日(火) 19時開演
10月23日(水)14時開演 / 19時開演 ※開場は開演の30分前
【上演演目】祇園精舎、鵼、奈良炎上、維盛都落、能登殿最期 (上演時間80分)
【出演】語り・金子あい、波紋音・永田砂知子
【会場】座・高円寺2
杉並区高円寺北2-1-2 TEL: 03-3223-7500 http://za-koenji.jp/ JR中央線高円寺駅北口 徒歩5分
【料金】大人 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)
※当日券は開演1時間前より販売。※高校生以下割引はアートユニットアイプラスのみで取扱。※未就学児のご入場はご遠慮下さい。
【チケット取扱】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
■イープラス http://eplus.jp/(PC・携帯)
■ちけっとぽーと TEL: 03-5561-7714(平日10:00〜18:00)http://www.ticketport.co.jp/
渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)銀座店(銀座ファイブ1F)東京店(大丸東京11F)新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)
【お問合せ】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
【スタッフ】
構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 音響:黒澤靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 宣伝美術:aikaneko 協力:永田倶楽部 後援:杉並区 企画・制作: art unit ai+(アートユニットアイプラス)
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