2012年12月3日月曜日

絶望か希望か──「足摺」

「足摺」は、かの有名な鬼界ヶ島で置いてきぼりにされてしまう俊寛のお話です。
能や歌舞伎、浄瑠璃の演目になっていますので、どこかでご覧になっている方も多いと思います。

俊寛が流罪になった原因「鹿ヶ谷事件」が起こったのが1177年。5月に発覚し6月には、藤原成経、俊寛、康頼が鬼界ヶ島に配流となりました。その1年後の1178年6月に清盛の娘で高倉天皇に嫁いだ徳子が懐妊、しかし体調が思わしくありません。その原因は南の島へ流したものたちの恨みによるものなので早く召し帰せということで大赦が行われ、成経と康頼が都へ召還されるのです。

鬼界ヶ島は南海の孤島で火山の煙がもくもくして硫黄がごろごろ、田んぼも畑もなく、住人の言葉はぜんぜん分からないところだと平家物語では書いています。

あらすじを見てみましょう。

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お話は都からの使者が喜界が島の浜辺にたどり着くところから始まります。


都からの使者の上陸に俊寛は大喜びしますが、赦免状に俊寛の名前はありませんでした。そもそも俊寛は、清盛に世話になった恩がありながら、それを無為にして謀議のために山荘を提供したことなどから、清盛の怒りは収まらなかったのです。
自分一人が赦免に漏れたことを知った俊寛は、丹波少将成経につかみかかり、「こうなったのも、そなたの父、大納言入道殿が企てた謀反のせいだ」と喚きます。丹波少将は、「そのような様子を見ると帰る気持ちにもなりません。乗せて差し上げてでも都に上りたいと思いますが、都のお使いもだめだといいますので、お許しもないのに、勝手に3人で島を出たなんてことが都に聞こえたら、かえって良くないことになります。都についたら様子を見て必ず迎えを寄越すので、それまで待っていてください」と一生懸命慰めましたが、俊寛は人目もはばからず泣きもだえました。

いよいよ船を出そうとすると、俊寛は船に乗っては降り、降りては乗って、自分も船に乗りたいという様子をします。ともづなを解いて船を押し出すと、俊寛は綱に取りついて引かれていき、「せめて九州まで」と船に取りすがって懇願するが、手を引きのけられ、船は沖へと漕ぎ出していきます。俊寛は、子が母を慕うように浜辺で地団駄を踏みながら「乗せて行け、連れて行け」と喚き叫び、高いところに上って船に向かって手を振りますが、船は遠ざかるばかり。結局俊寛は泣きながら浜辺で一夜を過ごし、成経が都に帰って良いように取りはからってくれることもるかも知れないと僅かな望みをかけ、身投げをしなかった俊寛のこころは空しいものでした。

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この章段は短いものですが、無駄のないうえに非常に劇的に俊寛の心情や様子が描かれて名文中の名文と言われています。聴いていてもありありと目に浮かびます。だからこそ、能や歌舞伎の題材になったわけですが、このタイトルの「足摺」というのがまたうまいこと付けたなあと思います。これは足摺(もしくは磋跎)の地名にちなみ一人の僧が仲間が船出するのに岬で足ずりをしたという説話を作者がうまく取り入れたとも考えられていますが、ともかく大の大人が子どものように地団駄を踏むのです。思いのほどが痛いほど伝わります。中程の成経の困惑した様子もよく描かれていると思います。俊寛の気持ちは分かるけれど、余計なことをして自分たちの赦免を台無しにしたくない…。

この俊寛という人物は、法勝寺という大寺院の寺務職として80カ所余りの荘園運営にあたり、4、500人の召使いや眷属に取りまかれ権勢を誇っていました。この人の祖父の大納言は、余りに怒りっぽい人で、自分の邸の前を滅多に人も通さず、いつも中門に佇んで歯を食いしばって周囲をにらみつけていたそうです。(最近見かけなくなりましたが、昔は町内にそういうおじいさんがいましたね。ボール取りに行くのがおっかない家!)その孫だからか、俊寛も僧侶なのに気性が激しく驕り高ぶった人で、だからつまらない謀反に参加したのだろうと平家物語は描いています。

このお話には、「有王」と「僧都死去」という続きがあって、これはもう胸に迫る最期ですが、これはいずれまた。

気性の激しい不信心な俊寛ですが、やはり都に残された家族を思い、帰りたい。絶海の孤島に取り残される彼の心境はいかばかりか。。。。ちなみに、私、最初に能「俊寛」を見た時、すっかり俊寛はおじいさんだと思っていましたが、よくよく読んでみると、享年37歳。
やはり、無念であったろうと思います。

こうした人々の怨念が積もり積もって平家を祟ったと書かれています。

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これはもう語りではない、古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台
「平家物語 語りと波紋音」第3回公演
祇園精舎 足摺 千手の前 入道死去
語り:金子あい 波紋音:永田砂知子

構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 
音響:黒沢靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 主催:平家物語実行委員会 


【日時】2012年12月6日(木)昼の部14:00開演/夜の部19:00開演(上演時間75分)
【会場】座・高円寺2 http://za-koenji.jp JR中央線 高円寺駅 北口 徒歩5分

【チケット料金】 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)
  ※当日券は開演1時間前より販売。高校生以下割引は平家物語実行委員会のみで取扱。
  ※未就学児のご入場はご遠慮下さい。※開場は開演の30分前。

【チケット取扱・お問合せ】
 平家物語実行委員会:090-6707-1253 heike@parkcity.ne.jp

 ちけっとぽーと:03-5561-7714(平日10:00〜18:00)http://www.ticketport.co.jp/
 渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)銀座店(銀座ファイブ1F)
 東京店(大丸東京11F)新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)
 横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)







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