2012年4月2日月曜日

祇王

「祇王」というお話はあとから挿入された説話ではないかと言われています。他と文章のタッチも違うし、がっつり女人往生の話だし。本によっては挿入されている場所もまちまちです。
登場人物が細かく見れば1000人近くいる平家物語は、その98%が男性といっても過言ではありません。まさに男の物語です。きっと語り伝えていくうちに、「美しい白拍子が清盛に翻弄される」というお話は民衆にとってキャッチーだったのかもしれません。

ちょっとあらすじを見てみましょう。

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栄華を極めた清盛は、横暴な振る舞いが多かった。
白拍子(男装の舞姫)の祇王は清盛の寵愛をうけ、一家はたちまち富み栄えた。しかし三年が過ぎたころ、十六歳の若い白拍子の仏御前が清盛の屋敷、西八条邸を訪ねてくる。清盛ははじめ追い返すが、祇王のとりなしで歌を聴いてみることにした。
すると清盛は思いもよらずその歌や舞に心を奪われ、祇王を追い出し、仏を迎えることに。
祇王は「萌え出づるも枯るるも同じ野辺の草 いづれか秋にあはではつべき(草木が春に萌え出るのも(仏御前)、冬に枯れるのも(祇王)、もとは同じ道端の花。いずれも凋落の秋(飽き)にあうのが定めなのだ)」という歌を障子に書きつけて西八条邸を立ち去る。

その後祇王は、母親と妹とともにひっそりと暮らしていたが、清盛の使者を通じ、退屈しがちな仏御前を慰めるために屋敷に出向き、舞を舞うよう命じられる。
祇王は母親に説得されたこともあり、しぶしぶ屋敷に出向いた。屈辱に耐えながら、「仏も昔は凡夫なり 我らも終には仏なり いづれも仏性具せる身を へだつるのみこそかなしけれ(仏も昔は普通の人だった。私たちもしまいには仏となれるのだ。いずれも仏の本性を持つのに、それを分け隔てるのは悲しいことだ)」と泣く泣く歌った。

この屈辱に絶望した祇王は自害したいと言い出すが、母のとぢにいさめられ、二十一歳の若さで出家を決意。十九歳の妹と四十五歳の母もともに出家して嵯峨の奥の山里に庵を造り、念仏を唱えて暮らしていた。
春が過ぎ、夏が過ぎた秋の日のある晩、その庵の戸を叩く者がいた。開けてみるとそれは仏御前だった。仏御前は涙をおさえて、自分をとりなしてくれた祇王を貶めてしまったこと、 自分もいつか同じ道をたどるだろうと悟ったことなどを語り、かぶっていた衣を払いのけると、仏御前は頭を丸めていた。
祇王は仏御前を許し、四人は極楽往生を願ってひたすら念仏をとなえ、やがて往生した。

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何年か前に、「祇王」の一人語りをやった時、あなたは女性だから清盛に捨てられた女の悲しい気持ちは分かるでしょうと言われて、困ってしまったことがありました。

女性と言ってもいろいろなタイプがいるし、一概に分かると言われても〜〜。(しかも私はどちらかというと耐えるタイプじゃないし〜〜〜)正直、当時の私は、演じてはいるものの女々しい感じがしてあまり共感できませんでした。

現代的に言えば、祇王は手に職があるのだから、男に頼らず生きていけばいいんじゃないかなあ…とか(←これは永田さんの最初の感想もそうでした〜)、母親のとぢもいかにも年老いた母らしくごちゃごちゃ言っているなあとか。仏御前は若くて浅はかで…。それでもってみんなで涙で袖をぬらしてばかり〜〜〜ああ、なんだかいらいらする!

しかし、
今回、もういっぺん読み返してみたら、

あれ?なんだか分かる。

祇王の悔しさや出家しても尚、心の苦しみから逃れられないことや、愚かしいまでの母親の心配がものすごくよく分かるのです。
自分も歳をとったんだなあ、とつくづく思いました。

そして何より、仏御前という人物がたいした女性だと思えました。
彼女は自分の芸を清盛に見せたかっただけで、祇王を追い落とそうとはこれっぽっちも思っていなかった。ずっと悔やんでいて、とうとう自分から清盛の寵愛を捨ててきたのです。まだ17歳にしかならないのに。

誰の心の内にも祇王がいて仏御前がいてとぢがいる。
これは4人だけど一人の女性なのではないかと思い始めました。
今はすべての登場人物がいとおしく思えます。
みなさんは、この「祇王」に出てくる4人の女性たちをどんな風に感じるでしょうか。

そうそう、ちょいちょい出てくる清盛の勝手振りも、すごく面白いですよ。
注意して聴いてみて下さい。

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「平家物語」
【出演】語り・金子あい/波紋音・永田砂知子
【演目】祇園精舎 ・祇王 ・橋合戦・坂落 ・先帝身投
【日時】4月9日(月)19時 /10日(火)14時 、19時
【会場】座・高円寺2 (JR中央線高円寺駅北口より徒歩5分) 杉並区高円寺北2-1-2 tel.03-3223-7500 http://za-koenji.jp/guide/index.html#link2
【チケット料金】前売3,500円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)
※当日券は開演1時間前より販売。高校生以下割引は平家物語実行委員会のみで取扱。※未就学児のご入場はご遠慮下さい。
【チケット予約・お問合せ】平家物語実行委員会 090-6707-1253 heike@parkcity.ne.jp

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