2012年4月16日月曜日

照明家という生き物

プレーリードッグか?いいえ、照明作業中です。
照明の横原氏を最初に「捕獲」したのは昨年の9月「平家物語 木曾三話」公演の打合せで松本の劇場を訪れた時のことです。

最初は、普通の朗読会として依頼された(であろう)「平家物語」松本公演。
主催者のKさんから「会場はまつもと市民芸術館小ホールを押さえましたから〜」と電話が来た時に、私の脳内にはビビビーっと電気が走り、石炭エンジン全開、ぷっしゅーっと煙を吐き始めました。ここ数年何度も出させていただいている大好きな素晴らしい芸術館の舞台でやれる!!これは…これは…ただ座って読む朗読ではもったいない!
ずっと実現したいと思っていた「コンテンポラリーな語り芝居・平家」をやろう!

その日から、私は「1,とにかく面白がって、2,少ない予算の中で、3,古典をモダンに料理できる、誰か」を、岩の奥に潜むオオサンショウウオのように、じぃぃっと探し始めました。

そしたら、偶然、目の前にぴらっとトクマスさんが現れました。よし、捕獲。
説明すると「それ、すっごく面白いーっ!!やるーっ!」

二人で舞台のプランを固め、松本の劇場に打合せに行くと、ますます夢は膨らみ
「やっぱり…照明が要るね。どう考えても要るね…。」
いったい誰にお願いすればいいのか〜。

しばらく劇場内の稽古場などに顔を出し、
いよいよ東京に帰るかと、エレベータに乗ろうとしたら、

「あ…!」
「お…!」

エレベータから照明の横原氏が現れたのです。

出た〜〜〜〜〜〜!居た〜〜〜〜〜〜〜!!

2人がかりで、速攻アタック。
この日空いてる?舞台装置の図面これなんだけど!ね?ね?面白そうでしょ?いや、絶対面白いよ。照明当てたくなっちゃうでしょー?(←トクマス)やろうよ〜〜〜!!お金無いけど(←カネコ)。

というわけで、無事横原氏を捕獲完了!

忙しいスケジュールの合間を縫って打合せ。
「古典に全くとらわれずコンテンポラリーな明かりで、遠慮なく、ざくざく空間を作ってほしい」とお願いすると、ふんふんと話を聞いていた横原氏は、あっさり「はい、分かりました。じゃ。」といって忙しく帰って行きました。

通し稽古にも至らない立ち稽古1回を経て、当日仕込みと本番で、ぞくっとするような明かりを作った横原氏。
役者は舞台の上で明かりに助けられることが多々あります。演技に寄り添ってすっと明かりが変わるだけで感情が溢れてくることもあります。まさに物語の空間を作り、役者を存在させてくれる明かりでした。

そして、今回の公演でも、横原氏の活躍はスバらしかったです。

私が、平家全体の流れを…と選んだバラバラなお話が5つ。(こんなに難しいとは思いもよらなかった)。

美術のトクマスさんはうんうんうんうん唸り続けた挙げ句、「在るようで無い、無いようで在る」絶妙な空間を産み出しました。しかし、それは照明なくしては成立しないもの。「あとはよろしく!」と横原氏にどーんと投げて、ひたすら銀パネル制作に没頭。

私は、照明や空間の断片的なイメージは割とはっきりあったものの、肝心の語りをどう立体に組み上げるかプランがなかなか固まりません。自分で選んでおきながら「誰だいったいこんな難しい組み合わせにしたのは!」と稽古場の隅でぶつぶつ。
特に難儀したのは「橋合戦」と「坂落」の戦の違いをどう出すか。

稽古場で、例の見えない照明ビームを目から出しながら、我々を凝視していた横原氏。
思い切って聞いてみると、非常に的確な意見が。
ああ、彼の目にはシーンが見えているんだなあと何度も思ったものでした。

そして、怒濤の仕込みと最初で最後の舞台稽古を経て出てきたものは、
トクマスさんの美術を見事に存在させ、くっきりとそれぞれのシーンを立ち上げた明かり。
照明によって私は平家物語の世界に本当に生かされ、動かされていると感じました。

打ち上げで四者四様に互いの謎解きをするのもまた楽しかったです。宴もたけなわ、次第に酔っ払ってきた頃、どうやって明かりをつくるの?頭ン中どうなってるの?輪切りにして見せてみろなど、ほぼ絡み始めた私たち。すると突然、横原氏は、えへへと笑いながら
「もう…、明かりが、ほんとに大っ好きなんすよ…俺。」

く〜〜〜たまらんね。まったく。

「楽しかった−!またやりましょうね」と去っていった横原氏。
今日もどこかで「大好きな明かり」を当てているでしょうね。

そうそう、横原君、どうしよーかなーと言っていた、例の平家の本。
次回までには買っておいてくださいよ。

(しかし、私も客席から照明見たかったなぁ…。出てると見られないんだもの。)

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